CD Jacket Milkayngu Mununggurr
HARD TONGUE DIDGERIDOO
Exercises in Northeast Arnhem Land Yidaki Style
日本の国旗日本語訳



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ジャケット前面 バックジャケット ジャケット後面
ジャケット前面 バックジャケット ジャケット後面



プロフィール
Milkayngu Mununggurr(短くしてMilkayと呼ばれる事が多い)は、オーストラリアの北東アーネム・ランドのヨォルング文化グループの一つであるDjapuクラン出身です。このCDが録音された場所にほど近いYirrkalaの沿岸部のコミュニティで生まれるが、彼の本当のホームランドははるか南の内陸部に位置するWandawuyである。

Milkaynguは10代の頃から儀式でイダキを演奏し、ヨォルングそしてオーストラリアを代表するバンド「Yothu Yindi」の録音とツアーに参加することで、世界的に脚光を浴びるようになった。彼はアーネム・ランド内のディジュリドゥ奏者に多大な影響を与え続ける存在であり、このCDのジャケットに写っている彼の息子Buyuもその一人です。イダキを通じた父と子のイメージはイダキに関する知識が伝達されているという事を表している。

このCDのフロント・ジャケットや、このCDの録音の大半で使われているYidakiに描かれているのはGudurrku(Brolga : 豪州鶴)です。Milkayいわく、「Gudurrkuは私がもっとも敬愛する鳥です。この気高い鳥の鳴き声をYidakiで模倣して演奏する時にはいつも、精神的にそして肉体的にも私に力を与えてくれる。私の一族の長老が私にはじめて本当のYidakiを作ってくれた時、彼はそのYidakiをGudurrkuと呼んでいた。


クレジット
Yidakiの演奏と指導: Milkayngu Mununggurr
製作・録音・ライナー
クラップスティック・アーティスト/風景写真:
Randin Graves(www.gingerroot.com/)
ブロルガの写真: David Webb
ジャケットデザイン: Brandi Chase and Randin Graves
録音: Buku-Larrnggay Mulka Center, Yirrkala, NT Australia
日本語翻訳: Naoki Nishigori(www.earthtube.com/)


このCDの録音に使われたのは、Art Center所蔵のMilkayngu Mununggurr作のイダキと、Burrngupurrngu Wunungmurra作のYidakiです。ヨォルングのスタイルを演奏するにはヨォルングの楽器が必要です。 ヨォルングの歌にMilkayがイダキを演奏している音源を聞きたい方は、Yothu Yindiの初期のCDを聞くことをおすすめします。Yothu Yindiのアルバムや、その他のヨォルングの音源を聞きたい方は、www.yothuyindi.com(英語)をチェックしてみて下さい。



北東アーネム・ランドに住むヨォルングの人々の言葉でディジュリドゥは、「Yidaki(以下イダキ)」と呼ばれている。「Nganarr-dal」(Hard Tongue : 力強い舌の動きを意味している)と呼ばれるヨォルングのイダキの演奏スタイルを学ぶ事は、最も難しいと言われている。

このCDでは、儀式でのイダキ奏者であり、Yothu Yindiのオリジナル・メンバーでもあるMilkayngu Mununggurrがイダキの演奏方法のベーシックを精選しています。サウンドと共にその演奏方法の解説が実際にCDに収録され、ジャケットにもその説明が掲載されています(英語表記ですが、インターネット上には様々な言語で紹介されています)。イダキのリズムに関しては、イダキのサウンドと息を吸う音の両方が様々なスピードで収録されています。

もしあなたがディジュリドゥを演奏し、ヨォルングのイダキの演奏スタイルを学ぼうとしているなら、このCDこそあなたが求めていた入門書でしょう。Play along!






ヨォルングの言葉とその舌の動き
このCDでは、イダキを演奏する前にMilkaynguがイダキのリズムを歌っています。彼の歌うサウンドはヨォルング語を話す人にとってはごく自然な響きですが、そうでない人にとっては理解できない舌の動きが使われています。そこで、ヨォルング語の綴りと図解を参照しながら、正確には一体どこに舌をつければいいのかという説明を作りました。

すべてのヨォルングのイダキ奏者が全く同じような舌の動きでイダキを演奏しているわけではありません。このCDには現在北東アーネム・ランドで聞かれる卓越したスタイルが録音されていますが、個人の創造性、クラン(言語グループ)や特定の歌にだけに見られる特殊な演奏技術、時代と共に変化する様々な演奏スタイルがあります。下記に紹介されている演奏技術は、全ての演奏スタイルのベースとなるものです。ここで学んだ事が、他のヨォルングの録音を研究したり、あなた自身のバリエーションを創り出す事に役立てばと思います。

Ng/ng
Tail-N(尾のついたN:以下テールN)

テールNは、「singer(シンガー)」と発音する時のようなやわらかい「ng」の発音を表すヨォルング語の綴りで、「Yolngu(ヨォルング)」や「Milkayngu(ミィルカイング)」といった言葉の中で使われています。やわらかいテールNの発音のあとには、「stronger」といった発音に見られるような強いGの発音が続く。

「ng」の発音と同時に息を吸う際には、「dhu」の発音は「dhung」に、「lo」の発音は「long」と綴るべきだと言われることがある。またイダキの演奏を表現する時に「dith'thung」という言い方をするヨォルングもいる。だがテールNはここに収録されている練習曲では使われていない。

dh/th - Interdental Position(歯間の位置)
ヨォルング語の「th」は、英語の「th」のようには発音されない。前歯の間に舌先を入れ、舌の腹を上の歯裏のでっぱりにあて、英語の「t」のように発音する。「dh」の発音も同じで、前述の舌の位置で「d」の発音をする。「dith」という発音の時にも、同じ舌の位置に舌先が落ち着く。「dhu」の発音の時には、この舌の位置から舌を後ろに押し引く。
dj/tj - Alveodental Position
舌の腹が上の歯裏のでっぱりにあたる時に、舌先を下の前歯の裏に触れる。「witj」の発音の時には、前述の舌の位置にむかって奥から舌を動かし、「dju」の時に舌をその場所から押し離す。
d/l Retroflexed Position(そり舌の位置)
上の前歯のすぐ後ろのでっぱりのへりに、舌先の裏が触れるようにほんの少し舌をカール・バックする。口蓋の後ろにむかって舌を動かす事はない。「dith」と「dup」の時には、この場所から舌が前に動いて、さっと力強く下に打つ。「dhirrl」の時には、力強い舌の動きの後に、この場所に舌が戻って来る。
rr Rolled R(巻舌のR:以下ロールドR)
前歯のほんのすぐ裏から、すばやく後ろにむかって舌先を動かしながら、前歯の裏のでっぱりをさっと打つ。ロールドRはスペイン語にみられるような長い「巻き舌のR」ではなく、一回ですばやくはねる音です。「dhirrl」の時には、舌先が歯間から後ろに向かってひきずるように動きはじめて、「そり舌の位置」にむかう途中で「rr」をさっと打つ。
Neutral
lo」の時の「o」、「dhu」と「dju」の時の「u」では、口腔内の真ん中のよりリラックスした位置に舌を置く。

練習曲の中で使われている舌の動き

witj-dju
図の5の口腔の中間におかれた舌を、図の2の上前歯の裏のでっぱりの場所へむち打つように動かし、最後に最初に舌を動かしはじめた場所5に舌を押すようにしてもどる。

dith-dhu
そり舌の位置(図の3)から舌が動きはじめ、むち打つようにして歯間の位置(図の1)に移動し、口腔内の比較的安らかな場所(図の5)にむかって押し戻る。
dhirrl
歯間の位置(図の1)から舌を動かしはじめて、図の4の場所でまき舌の「rr」をさっと打ち、そり舌の位置(図の3)にむかって舌を動かす。早いリズムで演奏する時には、この動きの最後に鼻からサッとひったくるように息を吸う。
dhirrl-lo
「dhirrl」という音の後に、口腔の真ん中のよりニュートラルな場所に舌を押し下げる。

dup
dupは舌の動のあるなしに関わらず、高いトランペットのような音を意味する。ヨォルングの歌や儀礼で使われる長く高いトランペットのような音は、横隔膜からの力強いサポートと共に、たんに固く絞った唇で演奏される(むしろ唇の真ん中のほんの小さな部分でのみで演奏される)。このCDに収録されているゆったりとした「dup」サウンド、そして持続低音(ドローン)とトランペットの移動の練習でこの音を聞くことができます。

dup-pu
スピーディーな演奏でトランペット音が低いドローン音からすばやく変化する時には、横隔膜からの激しい破裂するような空気にささえられて、そり舌の位置から舌を押し引いて演奏される。そして「p」の発音に向かって唇が閉じていき、トランペット音が鳴る。「pu」という音で表されているドローン音にもどる時には、唇は急激にリラックスした状態になる。




こういった舌の動きはヨォルングのイダキの演奏にとって非常に重要だが、単なる舌の動きだけではないものがある。それぞれの舌の動きの初動には横隔膜による破裂するような空気の押し出しがある。また、わずかに喉の筋肉を動かす事によって追加的に圧力を加える事もあります。「dith-dhu」の「dhu」というドローン音のハーモニーでみられるように、Milkaynguは絶えず声を使っています。こういった事を注意深く聞いてみて下さい。最後に、口の形とそれが音にどういった変化をもたらしているのかを考えてみて下さい。Milkaynguは、ノン・ヨォルングのディジュリドゥの演奏でポピュラーな高いハーモニクスを演奏しません。